「どの研究室に入るかで、JASSOの返還免除が取れるかどうかが変わる」——これを聞いてピンと来た人は、すでに奨学金戦略を正しく考えられています。
JASSO第一種(無利子)の返還免除は、大学院修了後に「特に優れた業績」と認められた学生の一部に適用されます。その評価基準となるのが、学術論文・学会発表・受賞歴です。
この記事では、大学院進学前の学部3・4年生に向けて、返還免除を意識した研究室の選び方と、指導教員の実力を客観的に調べる具体的な方法を解説します。
JASSOが返還免除を判断する3つの基準
まずJASSOの公式基準を確認します。詳細はJASSO公式ページ「返還免除について」に記載されています。
【JASSO返還免除の評価基準(第一種奨学金)】
- ①学術論文の掲載(査読あり学術誌への掲載)
- ②学会での研究発表・受賞(国内・国際学会)
- ③著書の出版(共著含む)
これらの「特に優れた業績」があると、修了時に返還額の一部または全額が免除されます。
免除率は大学・研究科によって異なりますが、成績優秀者の上位数〜十数%が対象となります。
筆者の経験上、業績の影響力には明確な順位があります(公式の区分とは別の、実感ベースの話です)。
- 学術論文の投稿・掲載(最も重要)
査読付き学術誌への掲載は、単独で免除に大きく影響します。 - 国際学会・国内学会での受賞
発表するだけでなく受賞歴があると評価が一段上がります。 - 学会での研究発表(口頭・ポスター)
複数回の発表実績があるほど有利です。
また、業績以外の要素として博士課程への進学者は優先的に免除対象になりやすいという傾向があります。
大学院研究科によっては、博士進学者を免除対象として優先する運用が行われているためです。
博士進学を検討している場合は、この点も視野に入れておくとよいでしょう。
これらの業績・条件はいずれも研究室の環境によって大きく左右されます。
論文を書かせる文化があるか、学会に行かせてもらえるか、共同受賞の機会があるか——すべて研究室で決まります。
返還免除を狙うなら研究室選びで見るべき3つのポイント
① 指導教員の論文実績|h-indexで確認する
指導教員の論文実績を測る指標として最も使いやすいのが h-index(h指数) です。
h-indexとは?
「h本以上の論文が、それぞれh回以上引用されている」という最小のhの値です。
例:h-index=20 → 20回以上引用された論文を20本以上持っている
引用数が多い=他の研究者に参照されるほど影響力のある研究を出している、ということを意味します。
分野・年齢によって差はありますが、理工系の目安は以下の通りです。
| h-index | 目安 | 返還免除への影響 |
|---|---|---|
| 〜10 | 若手講師・助教レベル | 業績機会は少なめ |
| 15〜25 | 活発な准教授・教授 | 論文・学会とも機会あり |
| 30以上 | 著名研究者・大型研究室 | 共著論文・国際学会の機会が多い |
※ h-indexは分野によって出やすさが大きく異なります。生命科学・医学は高く出やすく、数学・工学・人文社会系は低めに出ます。判断するときは必ず同じ分野内で相対比較してください(例:数学のh-index20は傑出、生命科学では平均的)。
h-indexの値や業績は、あくまで目安・参考値です。
研究室選びで最も大切なのは、研究テーマへの興味や指導方針との相性です。数値だけで決めるものではなく、ここで紹介した指標は「候補を絞り込むときの参考材料の一つ」として活用してください。
【Google Scholar でのh-index確認方法】
- scholar.google.com を開く
- 検索窓に「教授名 + 大学名」で検索
- 「ユーザー」タブに研究者プロフィールが表示される
- プロフィールページを開くと「引用数」「h-index」「i10-index」が確認できる
プロフィールページが存在しない場合は、研究者自身がGoogleに登録していないだけの場合もあります。論文タイトルで検索して被引用数を個別に確認しましょう。
② 科研費の採択状況|日本の研究.comで確認する
科研費(科学研究費助成事業)は、国から研究者に支給される公的研究資金です。採択額が多い教員ほど、学会参加費・海外渡航費を研究室費から出してもらえる可能性が高くなります。
【日本の研究.comでの確認方法】
- research-er.jp(日本の研究.com) を開く
- 研究者名(日本語)で検索する
- 該当する研究者を選ぶと、科研費の研究課題・採択カテゴリ・所属が一覧で表示される
科研費研究者番号からKAKEN本体の詳細(採択額・研究期間)にも飛べます。年間100〜500万円以上の採択が続いている教員は研究費が潤沢な傾向があり、国際学会の参加費(登録費+渡航費で20〜50万円)も研究室から出せる規模感の目安になります。
また、科研費の種別も参考になります。「基盤研究(S)」「基盤研究(A)」は採択額が大きく競争率も高いため、それを採択されている教員は研究力の高さが外部から認められていると判断できます。
ここまで紹介したh-index(論文)と科研費は、下のツールに教授名を入れるだけでまとめて検索できます。気になる研究室の指導教員で試してみてください。
.com 科研費・所属
研究業績 検索する →
Scholar 論文数・被引用数
h-index 検索する →
💡 日本の研究.com は科研費の採択状況や所属が一目でわかります(日本語名で検索)。Google Scholar は英語名で登録されていることが多いため、ローマ字で検索します。ローマ字がわからないときは、大学の教員紹介ページの先生のメールアドレス(例:tanaka@〇〇-u.ac.jp など)が手がかりになります。
※ 各サービスの検索結果ページへ移動します。スカラボが数値を取得・保存することはありません。同姓同名がいる場合は、結果ページで所属を確認して選んでください。
③ 研究室の先輩の実績|OB・OGの業績を調べる
教員の実績だけでなく、その研究室から輩出された院生が何をやってきたかを調べることも重要です。
確認できる情報源:
- 研究室の公式サイト:「業績」「発表リスト」「受賞歴」のページを確認する
- CiNii Research(cir.nii.ac.jp):研究室名や指導教員名で過去の学生論文を検索できる
- 学会プログラム:対象分野の主要学会のプログラムアーカイブで研究室名を検索する
「学生が毎年学会発表している」「院生が査読論文を書いた実績がある」研究室は、返還免除に必要な業績を積みやすい環境といえます。
研究室訪問で必ず聞くべき5つの質問
研究室訪問(ラボビジット)では、公式サイトでは調べられない情報を直接確認できます。以下の質問を先輩学生(M1・M2)に聞くのが効果的です。
| 質問 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 「M2のうちに学会発表は何回くらいしましたか?」 | 発表機会の多さ |
| 「国際学会への参加費は研究室から出ますか?」 | 研究費の充実度 |
| 「査読論文を書いた院生は何人くらいいますか?」 | 論文指導の実績 |
| 「先生はどのくらいの頻度でミーティングをしていますか?」 | 指導の密度(薄すぎると業績が出ない) |
| 「JASSOの返還免除を取った先輩はいますか?」 | 直接確認(聞ける雰囲気なら) |
訪問のタイミング:学部4年の夏(7〜8月)が理想的です。多くの大学では、大学院入試(9〜10月)の前に指導教員との事前面談が推奨されており、このタイミングで研究室訪問も自然に組み込めます。
まとめ:研究室選びで見るポイント
JASSO返還免除を意識して研究室を選ぶ際に、見ておきたいポイントをまとめました。
【研究室選びで見るポイント】
- 指導教員のh-index(Google Scholar)
- 科研費の採択状況(日本の研究.com)
- 院生の発表・受賞実績
- 学会参加の頻度
- 国際学会の参加費が研究室から出るか
- 査読論文を書いた先輩の有無
研究室選びは、指導内容や研究テーマへの興味が最優先です。ただ、JASSO第一種を借りている人にとって、返還免除(最大全額)を取れるかどうかは数百万円規模の差になります。h-indexと科研費の確認は10分でできますので、研究室候補を絞り込む際の参考指標として活用してみてください。
また、研究室選びと並行して、民間財団の奨学金との併用も検討する価値があります。JASSOとは別に月5〜20万円を無返済で受け取れる財団奨学金は、研究費の自己負担を減らし、学会参加のハードルを下げる効果もあります。

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